和名:アミメニシキヘビ
学名:Malayopython reticulatus
分布:東南アジア~インドなど南アジアにかけて広範囲に分布
環境:河川周辺の森林、草原、農耕地
活動時間帯:夜行性
食性:主に哺乳類、鳥類
全長:3-7m
毒性:無毒
世界最長のヘビ。
超大型のニシキヘビの中では細身であるため、体重はアナコンダやビルマニシキヘビなどに譲るが、体長の記録は本種が上回る。
メスの方が大型化し、最大でオスの3倍以上の体重、1.5倍程度の全長になるとされる。
和名は体表の網目模様に由来する。
種小名もrēticulum=網 + -ātus 接尾語 に由来し、網目模様を示している。
属名はMalayo=マレーシアの python=ニシキヘビを意味し、本種のネオタイプの産地であるマレーシアに由来する。
レティック、レティックパイソンという別名でも知られる。
褐色の地色に黄色と黒の模様、そして構造色が美しい模様を呈する。
腹側は白に近い。
本種の生息環境は本来、河川近くの熱帯雨林や草原であると考えられるが、
上記のように街明かりの見える都市にも生息する。(上:タイの首都バンコク市内 下:シンガポール建物内)
シンガポール、インドネシア、マレーシアのボルネオ島では下水道でも見つかるとされる。
また筆者は2度、道路上でアミメニシキヘビを発見している。(マレーシア:クアラルンプール近郊)
本種は遊泳が得意であり、沖合でも発見されている。
1883年の火山の噴火によって、ほぼ全ての生物が滅び、生物相が白紙状態になったクラカタウ島に鳥類を除くと最初に入植した脊椎動物のひとつでもある。
美しい模様から、革製品としての需要が古くからあり、一部では現在も乱獲されている恐れがある。
2017年のインドネシアでのアミメニシキヘビの合法輸出枠は、ペットトレード用に2,970個体、皮革取引用に159,030個体だったが、これらの捕獲枠を超過して乱獲された証拠が見つかっているとされる。
本種は急速な成長、早熟、高い繁殖力、食性や生息地の柔軟性、人からの見つかりにくさといった特性を持つため、集中的な商業利用に耐えることができるのかもしれない。しかし、採集圧が高いエリアでは地域個体群の絶滅などが生じる可能性も考えられる。
人をも絞め殺し捕食する大蛇であるが、地域によっては保全が必要となってくるのかもしれない。
この日ほど速く山道を走った日はないだろう。
マレーシアのクアラルンプール近郊でミズオオトカゲの観察を行い、もう少し山地の生き物も見てみようかということで山間に移動した。
車を脇道に止めギガスオオアリという東南アジア最大のアリを探すために2kmほど峠道を歩いた。
ギガスオオアリは当時この峠道でしか見たことがなく、長い距離を地道に歩く必要があった。
しかし一向に見つからないため、あきらめて引き返そうとしたときアミメニシキヘビが現れたのだった!
とりあえず1枚撮影したが、そもそもが虫目当てであったため
5cmまでの生物を撮るためのマクロレンズ1本とストロボ1灯しか持ち合わせていない。
同行者に頭を下げ見張りを依頼し、私は車に向かって韋駄天のごとく走った。
走るのは大の苦手だが、山道でここまで息も上がらず走り続けられたのには自分自身驚いた。
ギガスオオアリは見つからなかったが、それどころでないギガス=巨人を発見できたのは現地に来る面白さだろう。
押すだけで撮れるようにしていたが、同行者はカメラを触ったことがなく、ものすごいピンボケしていた。
暗過ぎてオートフォーカスが全く効かなかったのである。(これも今となってはいい思い出)
記事執筆・撮影者
外村康一郎 Tonomura Koichiro
1994年12月28日 兵庫県加古郡出身
日本爬虫両棲類学会、日本土壌動物学会所属。
幼少期よりヘビなどの爬虫類を愛好。2015年ボルネオ旅行を皮切りに、世界中で爬虫類の撮影を行う。
2017年観賞魚、爬虫類用品メーカーのジェックス株式会社へ入社、2018年より同社爬虫類部門EXO TERRAの商品開発担当、2021年退職。
2021年7月18日放送のNHK「サイエンスZERO“やんばる”世界遺産へ 奇跡の森になったワケ」ではホンハブの撮影に協力。
NHK取材陣と共に、かつて米軍の管理下にあった返還地の森で案内を行う。
「日本ヘビ類大全」「所さんの目がテン!公式ブック 生物多様性がわかる かがくの里」ヘビ写真提供ほか、
「ワニ大図鑑: 分類・進化・生態・法律・飼育について解説」へのイリエワニ写真提供など、爬虫類写真家としても活躍中。
参考文献
Stuart, B., Thy, N., Chan-Ard, T., Nguyen, T.Q., Grismer, L., Auliya, M., Das, I. & Wogan, G. 2018. Python reticulatus. The IUCN Red List of Threatened Species 2018: e.T183151A1730027. https://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2018-2.RLTS.T183151A1730027.en.
Rawlinson, P. A., Zann, R. A., Van Balen, S., & Thornton, I. W. B. (1992). Colonization of the Krakatau islands by vertebrates. GeoJournal, 28, 225-231.
Shine, R., Harlow, P. S., Keogh, J. S., & Boeadi. (1998). The influence of sex and body size on food habits of a giant tropical snake, Python reticulatus. Functional Ecology, 12(2), 248-258.
Shine, R., Ambariyanto, Harlow, P.S. and Mumpuni. 1999. Reticulated pythons in Sumatra: biology, harvesting and sustainability. Biological Conservation 87: 349-357.