ゴールデントビヘビ Chrysopelea ornata

和名:ゴールデントビヘビ
学名:Chrysopelea ornata
分布:インド、スリランカなど南アジアから東南アジア、中国にかけて
環境:樹上
活動時間帯:昼行性
食性:ヤモリ、トカゲ、カエル、小鳥など
全長:1-1.2m程度
毒性:弱 後牙


名前の通り、本属は飛ぶことで知られている。胴部を平たくして空気抵抗を高めることで、森林を滑空するのである。
黄緑色で鱗には黒い縞模様が入る場合が多いとされるが、広域分布であり個体差や地域差が大きい。

少々手荒だが、筆者はゴールデントビヘビが滑空するのか試すため、高く投げ上げたことがある。


結果はというと、人の力で投げ上げるのでは特に滑空はしなかった(苦笑)


しかし後から写真を見返すと、上記のような投げ上げ時は体は通常時の断面が丸い形状だが、
落下が始まると体を扁平にしているように見える。
何にせよ滑空させるのには高さ10m以上は必要なようだ。(トビヘビくん何回か投げてごめんね)

ちなみにゴールデントビヘビはほとんど滑空をしないとも言われており今後検証していきたい。


ゴールデントビヘビとの出会い

9月のタイ、雨期に入っているはずだが雨が少ない。
タイ王国天然資源・環境省水資源局の情報によるとエルニーニョ現象の影響でタイ中部では通常より55%も降雨量が少ないようだ。

到着してから3~4日はヘビ1匹見られなかった。こんな事は初めてだったため少々焦りだす。


そしてゾウが現れてさらに焦る。(どうやら飼育されているらしかったが、ゾウが見えたらそれは焦る。俺だって焦る)

同行者も熱中症気味で精神的にも参っていた様だ。
とにかく昼は暑すぎていかんということで、夜に注力することにした。
しかしタイは意外と厳格なところがあり、夜に自由に自然の中を散策出来ないことが多い。
多くの国と隣接しているためか軍人の警戒心は強く、そればかりか民間人でも銃を所持している場合もある。
戦争の痕跡が残る地域も多々あるため、全く初心者向けではない。
とにかく夜は注意が必要で基本的には出歩かない方が良い。
昼間の陽気さは無い別の国だと思っていただきたい。

というわけで、森に入るも叶わず、近隣の公園も野犬の大群と警備の軍人に阻まれて無駄足となった。
しかし雲が空を覆い始め、帰るには惜しい天候である。

悔しくてあてどもなく自然の多い区画を運転し続ける。
ポツリ―――窓ガラスを伝った水は、この国を訪れてから、はじめての雨だったと記憶している。

ほどなくして茶色っぽいヘビが路上に現れた。
急いで車を降りるが、隠れる場所なんてないはずなのに見当たらない。
確かにいたはずなのに……。

相当不機嫌になりつつも車に戻る。
すると1分もしないうちにアミメニシキヘビの幼蛇が現れたのである!

やはり雨が降るとヘビは出やすいように思う。
満足がいくまで撮影した。

ヘビを見たことで気力が回復し、昼間も活動することに笑
なんと単純な人間たちなのだろう。

やはりヘビが出た実績のある場所に通い詰めるべきである。
昨日、夜間に入ることが叶わなかった公園に行ってみた。

すると入ってすぐに緑色のロープが落ちていた。
「期待させやがって……」と思った瞬間それは猛スピードで動き出した。

「ヘビヘビヘビヘビ!!!!!!」
同行者と共に全力で走る!

木に隠れてしまったが、幸いにも薮から出ようとしている。
じわじわと初の昼蛇に嬉しさが込み上げてきた。

本州では見ることが出来ない鮮やかな緑色のヘビ。
ゴールデントビヘビである。

記事執筆・撮影者
外村康一郎 Tonomura Koichiro

1994年12月28日 兵庫県加古郡出身
日本爬虫両棲類学会、日本土壌動物学会所属。

幼少期よりヘビなどの爬虫類を愛好。2015年ボルネオ旅行を皮切りに、世界中で爬虫類の撮影を行う。
2017年観賞魚、爬虫類用品メーカーのジェックス株式会社へ入社、2018年より同社爬虫類部門EXO TERRAの商品開発担当、2021年退職。

2021年7月18日放送のNHK「サイエンスZERO“やんばる”世界遺産へ 奇跡の森になったワケ」ではホンハブの撮影に協力。
NHK取材陣と共に、かつて米軍の管理下にあった返還地の森で案内を行う。
「日本ヘビ類大全」「所さんの目がテン!公式ブック 生物多様性がわかる かがくの里」ヘビ写真提供ほか、
「ワニ大図鑑: 分類・進化・生態・法律・飼育について解説」へのイリエワニ写真提供など、爬虫類写真家としても活躍中。

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