タケアオハブ Trimeresurus stejnegeri

和名:タケアオハブ
学名:Trimeresurus stejnegeri
分布:台湾、中国南部、ベトナム北部
環境:森林、都市公園、樹上
活動時間帯:夜行性
食性:両生類、爬虫類
全長:0.5m
毒性:有 出血毒

緑色の体色と腹板と体鱗の境界の白線、赤い尾が特徴のアオハブ。
種小名はスミソニアン学術協会の爬虫類学者Leonhard Hess Stejneger氏への献名である。




オス個体は目の下に白線がある。メスではこの白線を欠くとされる。

台湾ではアマガサヘビ、タイワンコブラ、ヒャッポダ、タイワンハブ、トウブラッセルクサリヘビと共に「台湾六大毒蛇」と呼ばれる。
地元住民の話によると、台湾六大毒蛇の中では最も小型で毒量も少ないのだが、
個体数があまりにも多い上に、この中で唯一の樹上性であるため、顔や首などを咬まれ重症化するケースもあるという。
特に首元を咬まれ患部が腫れた場合に、気道を圧迫し呼吸困難になると地元住民は話されていた。

1904~1938年の35年間で台湾で記録された毒蛇咬傷は12,645件に上る。(平均1日1件以上咬傷事故がある計算)
そのうちの約47%が本種による咬傷であったとされる。
死亡率は0.9%であり他種の咬傷と比べると低いとも考えられるが、
2人でじゃんけんを行い7連勝するよりは高い確率ため、十分に高いリスクであると筆者は考える。

観察の際は十分な距離を保つことが重要である。



 

タケアオハブとの出会い

 


同い年のフィールドワーカーのTommy君と台湾に行った。台湾在住の甲虫屋トニーさんが案内してくださるので快適な旅である。
昼間にスウィンホーキノボリトカゲを観察したのち、クワカブを探しに森を散策した。

材をひっくり返す過程でブラーミニメクラヘビなどを見つけつつ、階段を上っていると唐突にタケアオハブが現れた!




私は後発的にヘビが好きになった、やや歪なフィールド人生を歩んでいる。
そのため当時マムシも1度しか見たことがないくせに、いきなりアオハブに出会ってしまったのである。
正直、目の前に現れた毒蛇にどう対処してよいのかわからず、周囲の霧やレンズ内の結露にも気が付かず必死に撮っていた。

皆さん慣れているようでパパッと撮り終わると私一人残されてしまった。
アオハブはいきなりダッシュして地面に降りてしまったため、周囲から枝を拾って木にかけなおしてみる。




カメラの操作方法も毒蛇の扱いもよくわからないまま格闘する事15分




少し状況になれ始めて、全身均一な緑ではなく、尻尾が赤くて美しい事に気が付いた。




腹板は眩しいばかりの黄緑色である。



見れば見るほど美しく、これで本格的に毒蛇にハマってしまったような気がする。
色々な意味で恐ろしいヘビである笑



台北101を楽しむことが出来るほどの都会で、タケアオハブのような毒蛇が生息しているのである。
台湾のポテンシャルには驚かされた。



なお台北には恐竜や爬虫類をテーマにした恐竜園区という場所がある。



様々なアートを楽しむことが出来る素晴らしい場所である。



中にはドラゴンカーセックスと思われるオブジェクトもあった。
……台湾のポテンシャルには驚かされた。



記事執筆・撮影者
外村康一郎 Tonomura Koichiro

1994年12月28日 兵庫県加古郡出身
日本爬虫両棲類学会、日本土壌動物学会所属。

幼少期よりヘビなどの爬虫類を愛好。2015年ボルネオ旅行を皮切りに、世界中で爬虫類の撮影を行う。
2017年観賞魚、爬虫類用品メーカーのジェックス株式会社へ入社、2018年より同社爬虫類部門EXO TERRAの商品開発担当、2021年退職。

2021年7月18日放送のNHK「サイエンスZERO“やんばる”世界遺産へ 奇跡の森になったワケ」ではホンハブの撮影に協力。
NHK取材陣と共に、かつて米軍の管理下にあった返還地の森で案内を行う。
「日本ヘビ類大全」「所さんの目がテン!公式ブック 生物多様性がわかる かがくの里」ヘビ写真提供ほか、
「ワニ大図鑑: 分類・進化・生態・法律・飼育について解説」へのイリエワニ写真提供など、爬虫類写真家としても活躍中。

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