パラダイストビヘビ Chrysopelea paradisi

 

和名:パラダイストビヘビ
学名:Chrysopelea paradisi
分布:インド、ミャンマー、タイ、フィリピン、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ブルネイ
環境:樹上
活動時間帯:昼行性
食性:ヤモリ、トカゲ、カエル、小鳥など
全長:1-1.4m程度
毒性:弱 後牙

 

空を滑空することが出来るヘビ。
最大で100m以上滑空した記録で知られる。

種小名はラテン語、あまたはギリシャ語で公園を意味する。
これはホロタイプが公園で発見されたことに由来するとされる。

 

黄緑を基調に鱗が黒く縁どられる。個体によっては背に赤い斑点を持つ場合もある。

 

筆者の観察例では腹部は黄緑~黄色単色であることが多い。

 

パラダイストビヘビとの出会い

 

 

コロナでの移動規制が撤廃されはじめ、私はシンガポールに行く事にした。
大都会と森林が隣接しており、ほぼ全てのポイントに公共交通機関で行くことが出来るのが魅力の国である。

 

 

国全体が東京23区程度の面積であり都市と森がコンパクトにまとまっている。
なんと空港から15分程度の距離でも熱帯雨林にアクセスすることが出来る。
大規模な国際空港の中で、空港から熱帯雨林へのアクセスの容易性が世界一良いかも知れない。

 

 

さらに多くの公園で遊歩道が整備されており、数年ぶりのリハビリにはちょうど良いと考えたのだ。

 

 

労せずミズオオトカゲやヒガシベンガルオオトカゲなどに会うことが出来る素晴らしい公園が何か所もあるため撮影は順調であった。

 

 

シンガポールはある程度知っているつもりになっていたが、ツリートップウォークが未経験であることを思い出した。
樹幹部に吊り橋を渡して、樹上の鳥類や着生植物を観察することが出来るエリアである。

 

暑すぎて生き物があまりでなくなっていたため、気分を変えて木々を眺めることにした。

 

 

普段見上げてばかりいた木々であるが、さて上から見るとどんなものだろうか。

 

 

巨大なビカクシダが樹幹部にいくつも着生している!!これは壮大である!

 

 

真下を見てみると全く地面が見えない。
普段静かな植物であるが、苛烈な光の奪い合いが行われていることを実感できる瞬間であった。
こうしてツリートップウォークを楽しんだのであった。

 


 

 

結局ヘビを観察することが出来なかった私はシンガポール動物園に向かった。
セイブガボンアダーなど日本では滅多にお目にかかれない毒蛇も見ることが出来る。

ひとしきり楽しんだ後で、結局ヘビは見られなかったなと帰路についたのである。

 


 

「あれ?トビヘビとの出会いは?」と思った読者の方も多いだろう。
実はあの中で出会っていたのである。
私はツリートップウォークで初めて間近で観察する野生のビカクシダに感動して重大なことを見落としていた。

 

この奇妙な出会いを追体験して頂くべく、あえてここまでヘビの存在を隠しておいた。

 

 

よく見ると写真中央にトビヘビの胴体、そして枯葉部分に頭部が写っているのが見えるはずだ。

 

写真整理をしている際に、「ビカクシダに目に見える根が生えるなんて奇妙だな……」と違和感をもった瞬間、
私は飲んでいた紅茶をこぼしてしまった。ヘビとはすでに出会っていたのであった。

 

海外に一歩でも出たら一瞬たりとも油断はならないのである。
(この後結局何度も油断してオーストラリアではタイガースネークを取り逃がしたりしているが……苦笑)

 

記事執筆・撮影者
外村康一郎 Tonomura Koichiro

 

1994年12月28日 兵庫県加古郡出身
日本爬虫両棲類学会、日本土壌動物学会所属。

 

幼少期よりヘビなどの爬虫類を愛好。2015年ボルネオ旅行を皮切りに、世界中で爬虫類の撮影を行う。
2017年観賞魚、爬虫類用品メーカーのジェックス株式会社へ入社、2018年より同社爬虫類部門EXO TERRAの商品開発担当、2021年退職。

 

2021年7月18日放送のNHK「サイエンスZERO“やんばる”世界遺産へ 奇跡の森になったワケ」ではホンハブの撮影に協力。
NHK取材陣と共に、かつて米軍の管理下にあった返還地の森で案内を行う。
「日本ヘビ類大全」「所さんの目がテン!公式ブック 生物多様性がわかる かがくの里」ヘビ写真提供ほか、
「ワニ大図鑑: 分類・進化・生態・法律・飼育について解説」へのイリエワニ写真提供など、爬虫類写真家としても活躍中。

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