A. できます。
ただし、ケージを置くスペース、餌を保管する冷凍庫、暖房器具の設置などが必要です。
何よりも一番大事なのは、同じ空間にお住まいの方の許可を得ることです。
蛇を飼いたいと、学生さんが自身のお金で購入されました。恐らく頑張ってバイトをして貯めたお金でしょう。しかし、当日中に蛇は返ってきました。ご家族の理解が得られなかったとのことです。あの学生さんの表情が忘れられません。
余程のことがなければ、本来ご購入された生体の返品返金はお受けできません。これは殆どのショップでの規約になっていると思います。一度ご自宅に迎え入れていただいた時点で、生体はショップで管理していた状況とは違う環境下に置かれます。持ち帰った生体を手を洗わずにハンドリングし、その生体に何らかの菌がうつっている可能性などをショップ側は考えなければいけません。もし菌がうつっていて、それが他の販売している生体に感染してしまったら……?
ショップ側の管理や確認不足でお渡しする前から生体の調子が悪い場合も考えられますが、購入者側も迎え入れる前に対面説明を受けた上で販売説明書に署名していますので、ショップ側で治療してから改めて引渡しをするなど、やはり返品返金は受けることが出来ないケースが多いです。
ずっと飼いたかった・欲しかった蛇を見つけた時の高揚、探していなかったけれど一目惚れした蛇、様々な出会いがあります。
筆者は爬虫類が通販で購入可能だった頃にガーターやコーンスネークを購入していました。親には「なんで爬虫類なん?」と言われていましたが、好き嫌いではなく特に興味がない程度の反応だったので、しれっと増やした結果が現在に至ります。最近になって分かったことですが、年代を重ねるにつれて爬虫類が気持ち悪いという意識が強い印象です。おばあちゃんに蛇の話をするとめちゃくちゃ辛辣な言葉が返ってきます。私は無視して喋り続けています。身の上話はこれくらいで……。
やはり、同居されている方の理解や双方のどちらかが我慢するような状況では、餌の問題も含めて飼育していくのは厳しいです。不毛な輸送移動が続くと生体に負担をかけることになりますので、購入する前に本当に飼育が可能かどうかを確認していただければと思います。
飼育ケージのサイズは個体サイズに比例します。一般的にはとぐろ3個分と言われていますが、身体が硬い蛇もいますので少なくとも身体を伸ばせる広さが必要です。地表性では底面積を、樹上性では高さを意識するとイメージが沸きやすいです。
ただし、樹上性でもCB個体(Captive Breed,人の手で繁殖された個体)は流木に登るのは初めの2~3週間程度で、環境に慣れてくると地上でとぐろを巻いて寝ていたりします。個体を観察して適宜レイアウト変更すると良いと思います。
ベビーを飼育する場合は空気穴のみ開いており、隙間のないケージを使用します。蛇は脱走の名人であり、特にナミヘビのベビーサイズは少しの隙間からでも容易に脱走します。通気性の良い虫かごやプラケースなどを使用する際は持ち手の部分などに隙間がないかを予め確認しておきましょう。ケージは個体に対して少し狭いくらいの方が良いです。広すぎるケージでは落ち着かず、それまで食べていた餌を食べなくなることがあります。これはナミヘビ・ボアパイソン問わずですが、特にボールパイソンなどでは顕著に見られます。
また、横開きのケージでは餌を食べていたが、上の蓋を外すタイプのケージ(コンテナを改造したものなど)に変えた途端に餌を食べなくなったという相談もありました。こちらは横開きのケージに戻す提案をしたところ、後日無事に食べたとの報告がありました。
上から給餌を行うと影になる面積が多く、臆病な個体では敵からの襲撃と勘違いして餌を食べなくなることがあります。置き餌などで慣らしていくことも可能ですが、余計なストレスを与えるよりもケージごと変えてしまった方が早いですし、飼育者の苦労も少ないです。
野生での生息環境に合わせたレイアウトを組むのも楽しみの1つですが、メンテナンスのしやすさも考慮しましょう。細かなフェイクグリーンなどは隙間の糞尿を見逃しやすく、不衛生になりがちです。筆者は使い捨ての歯ブラシで掃除していますが、汚れが取り切れない場合は不衛生なので基本的に破棄しています。シェルターや水入れの場合も同様です。
筆者はデジタルを使用していますが、電池交換が不便ならアナログでも何でも可。ただし、100円均一ショップで売っている温度計などは非推奨です。実際に売り場に行くと分かると思いますが、物によって温度計測に2±℃差が出ていることがあります。高所から落としたりしない限り温湿度計は長く使える物なので、初めて購入する場合は1000円~程度のそれなりのものをオススメします。
また、近年ではSwitchBotなど外出時でもスマートフォンから温湿度を確認できる商品も販売されており、日中や夜間、わざわざ温度計を覗きに行かずとも計測可能です。非常に便利ですが、こちらはこちらでネットワーク状況に左右されたり、機械なので多湿環境では正常に動作しないといった例があるようです。
蛇は変温動物なので、飼育者が温度調節を行う必要があります。冬季にエアコンの暖房を使用しない・できない場合は別途、保温器具が必須です。
日本国内種、いわゆる和蛇は常温管理が可能ですが、ジムグリなどは暑さには弱いので注意しましょう。(こちらは個別ページを参照。)
【パネルヒーター】
給餌後の消化を促して消化不良を防ぐのが主な用途です。抱卵個体では腹を温めることで体内の卵の成熟を早めることができます。
パネルヒーターはケージの外側、底面の半分程度に敷きます。底一面に敷くと熱いのに蛇の逃げ場が無いため、腹板が爛れたりなどの低温やけどを引き起こすことがあります。また、床材が湿っている状態ではケージ内が蒸しあがり、最悪の場合はオーバーヒートで死ぬこともありますので絶対に全面には敷かないようにして下さい。
【暖突】
蛇が呼吸する際のケージ内の空気を保温する器具です。暖突は金網やメッシュ製の蓋にネジで取り付けますが、プラスチックやアクリル製の蓋では溶けるなど事故の原因になるため使用は控えましょう。スタイロフォームなどをDIYし、簡易温室にしたうえで別箇所に取り付けたりと工夫している例もありますが、いずれも自己責任で行ってください。
【保温球】
昼行性の蛇ではバスキング用ライトとして設置します。ケージ内に設置すると蛇が巻き付いてしまい大火傷しかねないため、必ずケージの外から、クリップスタンドなどに取り付けて設置します。暖突と比べると使用している例は少ないですが、大型種などでは体温調節に役立ちます。上記の暖突にも言えますが、これらを使用すると空気がかなり乾燥し、冬季は更に湿度不足になりやすいです。乾燥を好む種以外では脱皮不全にならないよう、たまに霧吹きなどを行います。
【サーモスタット】
日中の外出時でも温度管理、温度制御を自動で行ってくれる器具です。通常の場合、コンセント電源⇒保温器具と直挿ししますが、サーモスタットを使用する場合はコンセント電源⇒サーモスタット⇒保温器具と中間に挟む形です。
※商品によって取り付け方が異なるので説明書を必ず読んでから取り付けてください。誤った取り付けは火事の原因になります。
とぐろを巻いた状態で蛇が浸かることができ、ひっくり返されない程度の重さがあるものであれば何でも使えます。タッパーや陶器、ベビー個体ではウェットシェルターなども使えます。使い捨てをしないのであれば、洗いやすいデザインのものにすると衛生面も良いです。洗浄する際はメラミンスポンジなどを使用し、四隅や縁の汚れを取り除きましょう。
飼育する種の生息環境に合わせます。情報に乏しい場合はiNaturalistや学名での検索を行い、現地での生息写真を確認するのも一つの手。WC個体(Wil Caught,野生採集)では身体のダニや便から寄生虫が排泄されていないかを確認するため、導入時はペットシーツを推奨しています。
土などを使用する場合、掃除用のスコップを用意し、糞が固まっている周囲を取り除けば毎回ひっくり返して掃除せずに済みます。全体が汚れてきたり、底に尿酸の粉が見える場合は全交換します。
乾燥地帯や分布域が広範囲の個体は、ペットシーツ、園芸用品として販売されている土、デザートブレンド・ウォールナッツサンドなどのくるみの殻を砕いたものを始め、幅広く使用できます。赤玉土は比較的目が粗い・大粒のもの、土が潰れにくい硬質のものが使いやすいです。体感ですが鹿沼土は崩れやすく粉塵が舞いやすいのであまりお勧めしません。地中性の個体(アラビアサンドボア/ Eryx jayakari など)であれば目の細かなデザートサンドなど。
湿潤地帯の個体はソイルなどを水苔と合わせてセッティングします。ただし、湿度が高い地域に生息しているからと常に多湿にしていると容易に皮膚病になる場合があります。
また天然の素材を使用している床材は、商品がパッキングされた時点で虫が混入している場合があります。トビムシであれば害はありませんが、気になるなら使用する前に煮沸消毒や天日干し、冷凍保存などの処理を行います。