和名:ヘルフェンベルガースジオナメラ
学名:Elaphe taeniura helfenbergeri
分布:ミャンマー、タイ西部
環境:草原、岩場、洞窟内
活動時間帯:昼行性
食性:ネズミ、コウモリ等哺乳類、鳥類
全長:1.5m
毒性:無し
筋の入った尾を持つ美しいナミヘビ。
筆者が撮影した個体は、頭部から首元が灰青、眼の後ろに黒の線、口元は灰青をわずかに帯びた白色、
胴体は黄褐色から尾に向かうにつれ黒い模様が入っていた。
種小名はスイスの爬虫類研究者、Notker HELFENBERGER氏への献名である。
2010年に記載された比較的新しい種であり、観察例も少なく不明点が多い。
タイの首都バンコク付近でアミメニシキヘビの撮影に成功したものの、多くの日程を消費しヘビ1匹のみ。
確かに大物ではあるが雨がほとんど降らない状況は変わらず、
効率の面から、根本的に場所変更が望ましいのではないかと考え始めていた。
ウタイターニーからカンチャナブリーにかけての洞窟群を回るのもよいなと考えた私は
最近知り合ったばかりのタイの友人に連絡をとった。
彼は私より若いがカンチャナブリー出身で地元に詳しい。
同地は戦争映画等で知られるように、いまだに戦禍の傷跡の残る場所である。
住民たちは有事に備え銃を携行していることも多い。
夜間徘徊する我々のような人種はハッキリ言って誤射されても文句は言えないだろう。
何を聞いても「イーシーイーシー」(easy が訛っている)と答える怪しげな人物だが、今回は頼るしかないだろう(笑)
流石地元出身、面白いほどスルスルと話が進んでいき、最初の頼りなさげな印象はどこへ。
コウモリの多い洞窟などエサ資源が多い箇所を狙って入っていく。
本種は洞窟内のような涼しい環境でコウモリや侵入した小鳥等を捕食しているものと考えられる。
洞窟では散らばった鳥の羽や本種と思われる脱皮殻が散見された。
痕跡が沢山あるなと思っていた矢先、スジオナメラが現れたのだった!
性格は臆病な面があり、発見時は洞窟内の狭い隙間からこちらを伺っていた。
撮影していたところスジオナメラは逃げようとした。結果、手が届かない箇所にいたのに撮影しやすい箇所に現れてくれた。
しかし外に出ると性格は一転、何度も咬みついてくる気性の荒いヘビへと変貌した。
しっかし案外労せず見つけられてしまうこともある(笑)
ありがたいことである。
なお本記事の詳細は雑誌:季刊奇蟲008号75ページ以降に掲載しているため、併せてご一読いただければ幸いである。
記事執筆・撮影者
外村康一郎 Tonomura Koichiro
1994年12月28日 兵庫県加古郡出身
日本爬虫両棲類学会、日本土壌動物学会所属。
幼少期よりヘビなどの爬虫類を愛好。2015年ボルネオ旅行を皮切りに、世界中で爬虫類の撮影を行う。
2017年観賞魚、爬虫類用品メーカーのジェックス株式会社へ入社、2018年より同社爬虫類部門EXO TERRAの商品開発担当、2021年退職。
2021年7月18日放送のNHK「サイエンスZERO“やんばる”世界遺産へ 奇跡の森になったワケ」ではホンハブの撮影に協力。
NHK取材陣と共に、かつて米軍の管理下にあった返還地の森で案内を行う。
「日本ヘビ類大全」「所さんの目がテン!公式ブック 生物多様性がわかる かがくの里」ヘビ写真提供ほか、
「ワニ大図鑑: 分類・進化・生態・法律・飼育について解説」へのイリエワニ写真提供など、爬虫類写真家としても活躍中。