和名:ヘーゲンアオハブ
学名:Trimeresurus hageni
分布:タイ、マレーシア、インドネシア
環境:低標高の森林、樹上
活動時間帯:夜行性
食性:両生類、トカゲ、鳥類、哺乳類
全長:0.7-1.1m
毒性:強
緑色と赤い尾が美しいアオハブ。体の細さに対して、幅が広い大型の頭部をそなえている。
多くの個体は体表にヨロイハブの幼蛇のような等間隔の淡い斑点があるのも特徴的である。
種小名、及び和名はスマトラ島東部で活躍したドイツの博物学者ベルンハルト・ハーゲン博士への献名である。
従来、インドネシアにも本種は分布するとされたが、分類学的再検討の結果、
2022年に本種には3種の隠蔽種が含まれていることが判明した。
ニアス島からT. calamitas、シベルト島からT. whitteni、シムルエ島からT. kirscheyi の3種が新種として記載された。
磐田市竜洋昆虫自然観察公園のゴキブリスト柳澤静磨くんと、在野のゴキブリ研究者大北くんとは
シンガポール、マレーシアで多くのヘビを観察することが出来た。
1度の旅程で2回マタハリヘビを発見した他、シロオビアマガサ、シャムアオハブ、ジャスパーオオガシラなどを撮影出来た。
お腹いっぱいなほどの密度の濃い旅程ではあったのだが、
私はもっと安価な時期の飛行機で帰る予定であったため彼らを見送った後、数日間の猶予があった。
マレーシアを1000km以上運転した疲れもあり遠出はしたくないし、トラブルがあると飛行機に乗り遅れかねないため
クアラルンプールからあまり遠くない箇所でヘビを探すことにした。
ところがクアラルンプールの周りで生き物を探すのは案外難しいものである。
夜間ウロウロ歩いていると、不穏な看板があちこちに立っている。
民家や軍施設、果てはランの盗掘を防ぐためなど理由は様々ではあるが、体に穴をあける趣味はないため素直に引き返す。
二晩ほど無駄にしてしまっただろうか。海外での生き物探しあるあるではあると思うが、
そもそも森に入れず終了というパターンである。
日本から3名+マレーシアの友人2名の合計5名でワイワイやっていたところから、探せど森に入れない2日間。
こんなことなら一緒に帰るんだったと後悔の念がよぎる。
片っ端からマレーシアの友人に連絡を取るもKL付近にいい場所はなく、あっても大学の演習林で一般人は入れないと連絡がきた。
筆者は雄大な自然の中でヘビと出会いたいという性癖があるが、
国立公園は夜間立ち入り禁止、自然と入れる山も近辺になしということで二進も三進もいかないため、一度このこだわりを捨ておくことにした。
(ちなみにこの性癖のせいで最も効率が良いヘビ探し方法と思われる車による林道流しをソロで行ったことがない笑)
周辺には割としょうもないキャンプ場(失礼)が多いことに気が付いたため、環境を変えてヘビを探すことにした。
実際、大自然よりも里山や民家近くを好むアオダイショウ的なヘビもいるわけなので、こういったアプローチは効果的なはずである。
夕方18時から森に入り、キャンプ周りの山を歩いてみる。
キャンプサイトだが幸い誰もいないため自由に歩き回ることが出来た。
良いところというわけでは決してないのだが、ちまちま変わった虫が現れるため、
悪くはないかという感じで帰るほどではないが、やや退屈かという微妙な空気のまま7時間が経過した。
流石に帰国便を意識した動きをしたいが、最後の一押しが欲しい。
みんなで盛り上がっていたあの歓喜をもう一度手にしたいのだ。
そんなことを考えていたら、私は付随反射的に左足を引いていた。アオハブが地面にいたのである!
意識より早く足が勝手に動いたため驚いたが、間一髪、ヘーゲンアオハブを踏まずに済んだ。危ないところであった。
余計なことを考えている最中に出てくるヘビが最も危ない。
2重のラッキーであった。
最近は多少カメラの扱いに慣れたので、タイマー撮影でハブとの自撮りもこなしている。
蛇使いっぽくとれたかなと思っていたが、帰国して画像を見るとズボンの股部分が裂けておりパンツが丸見えである苦笑
記事執筆・撮影者
外村康一郎 Tonomura Koichiro
1994年12月28日 兵庫県加古郡出身
日本爬虫両棲類学会、日本土壌動物学会所属。
幼少期よりヘビなどの爬虫類を愛好。2015年ボルネオ旅行を皮切りに、世界中で爬虫類の撮影を行う。
2017年観賞魚、爬虫類用品メーカーのジェックス株式会社へ入社、2018年より同社爬虫類部門EXO TERRAの商品開発担当、2021年退職。
2021年7月18日放送のNHK「サイエンスZERO“やんばる”世界遺産へ 奇跡の森になったワケ」ではホンハブの撮影に協力。
NHK取材陣と共に、かつて米軍の管理下にあった返還地の森で案内を行う。
「日本ヘビ類大全」「所さんの目がテン!公式ブック 生物多様性がわかる かがくの里」ヘビ写真提供ほか、
「ワニ大図鑑: 分類・進化・生態・法律・飼育について解説」へのイリエワニ写真提供など、爬虫類写真家としても活躍中。
Gernot Vogel1*
, Patrick David2 & Irvan Sidik3
A REVIEW OF THE COMPLEX OF Trimeresurus hageni (LIDTH DE
JEUDE, 1886) (SQUAMATA: VIPERIDAE) WITH DESCRIPTIONS OF
THREE NEW INSULAR SPECIES FROM INDONESIA