ホソツラナメラ Gonyosoma oxycephalum

和名:ホソツラナメラ
学名:Gonyosoma oxycephalum
分布:インド、ミャンマー、インドネシア、カンボジア、タイ、ラオス、フィリピン、ベトナム、マレーシア、シンガポール
環境:森林、樹上性
活動時間帯:昼行性
食性:爬虫類、鳥類、哺乳類
全長:150-180cm
毒性:無し

 

細い面のナメラである。
種小名もoxy=細い、cephalum=頭という意味で、和名のホソツラと一致している。

筆者の観察では蛍光しているかのような緑色を呈しており、
舌はアオマタハリヘビを想起させるような鮮やかな青色と濃紺であった。

 

なお、怒ると独特の膨らみ方をして威嚇してくる。

 

ナメラの名の通り、滑らかな質感の鱗である。
ナメラ=滑らかな甲羅、羅は表面などの意味を持つと考えられている。

 

ホソツラナメラとの出会い

空港から外に出た瞬間。警察に銃をチラつかされ路地裏に連れ込まれチップを要求された。
フィリピンの治安の悪さは知識では知っていたが、まさか自分が一文無しになるとは思わず。

クレジットカードはパスポートの次に重要とはよく言ったもので、
キャッシングサービスがなければ日本大使館のお世話になっていたかもしれない。

強くなることを誓い、髭を伸ばし現在の姿に変貌したのである(5年間で26kg体重を増やした)。
現在の姿になってから詐欺や恐喝の被害は1度も経験がないため海外渡航は見た目も重要かもしれない。
ヘビも擬態で外敵を退けることがある。我々善良な市民も時にはベイツ型擬態をすべきである。

 

気を取り直してバスに乗る。いくつか乗り継いでマニラから8時間ほど移動しただろうか。

 

ここからはFacebookで知り合ったフィリピン人に会いに行く。
今だったらこんな危ないことはしないのだが、私も世間知らずであった苦笑

 

それにしても熱帯雨林で乗るバイクは気持ちがいい。

 

なんやかんやトラブルがあったが村にたどり着いた。
村長に挨拶に行くと「山賊が出るからガイド兼ボディガードを3名付ける」と言ってきた。
1名で十分だと断ったのだが、「ここで払う金がお前の命の値段だ」と脅されここでもお金を全て巻き上げられた。
銃の前では人は無力。

幸い警察に金を巻き上げられていたおかげで知恵が働き、
現金を2か所に分散していたため、何とか帰国は出来そうではある。

しかしここからは払ったお金が正当なものだとわかる局面をいくつか迎えつつの旅程であった。

蛇探しはやはり夜がいいらしい。逸る気持ちを抑えて夜を待った。
開始15分でトントン拍子にヘビが出てくる。

 

樹上にはルソンカサントウ Ptyas luzonensisの姿や

 

アハスナメラCoelognathus erythrurusの姿が!

 

そして最後にホソツラナメラも観察することが出来た。

道中は恐ろしく大変だったが、ヘビの数が多すぎて撮影を断念する程の夜であった。

当時私はサラリーマンで3連休+1日の有給休暇で世界中を旅していた。
苦労して辿り着いたヘビの楽園は一晩の夢と終わったのであった。

この旅の恐怖と安堵、歓喜と興奮は私の脳を焼いてしまった。
元の生活に戻ると眠くて仕方がない。こうして独立に至るのである……。(ジャンキーになり果ててしまった。)

 

記事執筆・撮影者
外村康一郎 Tonomura Koichiro

1994年12月28日 兵庫県加古郡出身
日本爬虫両棲類学会、日本土壌動物学会所属。

幼少期よりヘビなどの爬虫類を愛好。2015年ボルネオ旅行を皮切りに、世界中で爬虫類の撮影を行う。
2017年観賞魚、爬虫類用品メーカーのジェックス株式会社へ入社、2018年より同社爬虫類部門EXO TERRAの商品開発担当、2021年退職。

2021年7月18日放送のNHK「サイエンスZERO“やんばる”世界遺産へ 奇跡の森になったワケ」ではホンハブの撮影に協力。
NHK取材陣と共に、かつて米軍の管理下にあった返還地の森で案内を行う。
「日本ヘビ類大全」「所さんの目がテン!公式ブック 生物多様性がわかる かがくの里」ヘビ写真提供ほか、
「ワニ大図鑑: 分類・進化・生態・法律・飼育について解説」へのイリエワニ写真提供など、爬虫類写真家としても活躍中。

-威嚇の写真のみマレーシア、パハン州にて撮影。
他全個体はフィリピン、ルソン島内にて撮影。

 

 

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