和名:マタハリヘビの一種
学名:Calliophis intestinalis linatus
分布:東南アジア
環境:原生林、または自然度の高い山地、森林
活動時間帯:夜行性
食性:ヘビ食性が強い
全長:80cm程度
毒性:強
赤黒のストライプと青く見える構造色が特徴的なコブラ科Calliophis属の毒蛇。
小型で口が小さく地元住民からは、さほど恐れられていない様子が伺えたが
強力な毒を持ち、種によっては咬傷による人の死亡例があるため、観察には十分な注意が必要である。
本個体は筆者がマレーシアのペラ州にて撮影した。
和名のマタハリはマレーシアの言葉で太陽を意味する。
日本のコブラとして知られるヒャンやハイ、イワサキワモンベニヘビはかつてマタハリヘビ属に分類されていた。
(うちヒャンとハイはどちらも生息地の方言で日照りを意味しており、太陽との関係を感じさせられる。)
属名はCalli=美しい ophis=ヘビ という意味である。
11種が知られるが、どれも属名に相応しい美しいヘビばかりである。
尾をもたげてを腹面を見せる威嚇行動が知られている。
腹部は背面と大きく模様が異なりバンド模様である。また背面同様に構造色をもつ。
同種内でも産地による色彩の変異に富んでいる。
この個体は筆者がシンガポールにて撮影した。
磐田市竜洋昆虫自然観察公園のゴキブリスト柳澤静磨くんと
同じくゴキブリの論文を多数世に出している大北くんが初めて海外に行くという事で、案内役を仰せつかった。
これまで様々な方を案内してきたが、ゴキブリ屋さんと行くのは初で大変楽しみである。
マレーシアへの直行便よりもシンガポール経由の方が安く上がることがわかったため、
次の飛行機が来るまでの12時間を利用してシンガポールに行く事を提案したら、
同料金で2か国行くことが出来ることに彼らは喜んでくれた。
静磨くんは興味の範囲が広く、ゴキブリのみならずヘビも観察したいということであった。
さすが自宅でアナコンダを飼育しているだけある。
マタハリヘビが見たいとは以前から聞かされていたのであったが、
まさか見ることはないだろうと、頭の片隅に置いておくに留まった。
大北くんがどこに行ってもイミグレーションなどで怪しまれて先に進めないことを除いては概ね良好に旅は進んでいった。
私はシンガポールには旅行やトランジットで度々訪れており、この旅の3週間前にもシンガポールに滞在していた。
いつも通りの場所でいつも通りのコース。
その考えが甘かったのだ。
いつもの場所から自動販売機が撤去されていたのである。
街に戻るにはかなり遠いし、深夜着のため店も営業していない。
これは朝まで水なしで撮影をしなくてはならない……。
しかもトランジットであるため宿を取らなかった。
撮影機材が20kg入ったキャリーケースを1人1台もったままジャングルへ入るのに水なしはキツイ。
私も案内するといいながら結構適当である。(同世代の男だから現場でなんとかすりゃいいだろうの精神であるが自分も困った)
とりあえず3人のキャリーケースを半分土に埋めて木々で覆い隠してジャングルを歩きだすことにした。
ああ……。バカ丸出しである。
3週間前はここでカギムシを見たんだよねぇ……。と説明していると赤い尻尾が見えたような気がする。
体感的にはこの程度の違和感。
知らぬものを触りに行くほど愚かではないが、いやー珍しいヘビだったらもったいないしなぁ。
えいっと周囲の枝葉を取り除くとなんと開始早々ヘビが現れたのである!
ぎゃーーーーーー!!!
バカ丸出しである!
マタハリヘビの話をしていたのに言葉が出てこない。
すぐに静磨くんが反応するも言葉が上手く出ない(苦笑)
ヘビ探しは上手くいくときは、すんなりすぎる程上手くいってしまうのであった。
初めて見たマタハリヘビの一種は、あまりにも神々しく見えた。
写真を見るだけで疲労困憊具合が伝わる事だろう(笑)
なおこの旅行は、ペレ出版 著 柳澤静磨「愛しのゴキブリ探訪記 ゴキブリ求めて10万キロ」にもこの旅について別視点で書かれているため、ぜひ読んでいただきたい。
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記事執筆者
外村康一郎 Tonomura Koichiro
1994年12月28日 兵庫県出身
日本爬虫両棲類学会、日本土壌動物学会所属。
幼少期よりヘビなどの爬虫類を愛好。2015年ボルネオ旅行を皮切りに、世界中で爬虫類の撮影を行う。
2017年ジェックス株式会社へ入社、2018年より爬虫類部門EXO TERRAの商品開発担当、2021年退職。
2021年7月18日放送のNHK「サイエンスZERO“やんばる”世界遺産へ 奇跡の森になったワケ」ではホンハブの撮影に協力。
NHK取材陣と共に、かつて米軍の管理下にあった返還地の森でのガイドを行うなどヘビでの取材協力多数。