キールウミワタリ Cerberus rynchops

和名:キールウミワタリ
学名:Cerberus rynchops
分布:インド、インドネシア、タイ、パプアニューギニア、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア
環境:汽水域、マングローブ林
活動時間帯:夜行性
食性:魚、甲殻類
全長:0.6-1m
毒性:弱毒とされる 後牙

海を渡り生息域を広げたと考えられるヘビ。ウミヘビの仲間ではなくミズヘビ科である。
属名Cerberusはケロベロスを指しており、犬顔に見えることに由来するとされる。
種小名は古代ギリシャ語の ῥύγχος =くちばし ὤψ 顔に由来する。

深緑から灰褐色の地色に黒い帯模様が入る。
鱗には名前の通りキールがある。

目が少し突き出て上を向いており特徴的な顔つきと言えよう。

犬顔と言われればそう見えるが、記載者のイメージするケロベロス像が気になって仕方がない。

腹板は美しく黄色と薄藤色を呈している。

筆者の経験では夜間、干潮時のマングローブ林に水が溜まって魚が取り残されている箇所で多く見られた。

このように魚が取り残されている所で待ち伏せをして、目の前を魚が通りかかると咬みつき捕食する。

キールウミワタリとの出会い

シロオビアマガサヘビを観察しようと、ペナン島のチュン氏の車に乗りマングローブ林にやってきた。
「キールウミワタリやミズヘビが出ていれば、それを狙いにアマガサヘビがやってくるからマングローブを歩こう。」
という話であったが、なんと一発目のヘビがアマガサヘビであった。

アマガサヘビの撮影を終え、キールウミワタリの観察に乗り出すと、1つの水たまりにつき3~4匹いるではないか。
これは入れ食いだなぁと思っていると、キールウミワタリも次々と魚を捕食していく。

蛇の捕食を観察する機会は意外と珍しいため、夢中で撮影した。
最終的に一晩で30匹以上観察することが出来た。
これは面白いと思いマレーシアの別の友人を誘い翌日も訪れたが、潮が満ちているためか1匹も見ることが出来なかった。
少し条件が変わると全く見られないものである。(誘ったのにゴメン!)

とぼとぼと車に戻るとオマケとばかりに頭を泥の中に埋めている個体や、
遠方の干潟をのそのそと歩いている個体を観察することが出来た。

アマガサヘビの撮影は精神をすり減らすもので、気力は尽きる直前であったが何とか記録していてよかった。
見た時に記録する重要性を再認識したものである。

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記事執筆・撮影者
外村康一郎 Tonomura Koichiro

1994年12月28日 兵庫県加古郡出身
日本爬虫両棲類学会、日本土壌動物学会所属。

幼少期よりヘビなどの爬虫類を愛好。2015年ボルネオ旅行を皮切りに、世界中で爬虫類の撮影を行う。
2017年観賞魚、爬虫類用品メーカーのジェックス株式会社へ入社、2018年より同社爬虫類部門EXO TERRAの商品開発担当、2021年退職。

2021年7月18日放送のNHK「サイエンスZERO“やんばる”世界遺産へ 奇跡の森になったワケ」ではホンハブの撮影に協力。
NHK取材陣と共に、かつて米軍の管理下にあった返還地の森で案内を行う。
「日本ヘビ類大全」「所さんの目がテン!公式ブック 生物多様性がわかる かがくの里」ヘビ写真提供ほか、
「ワニ大図鑑: 分類・進化・生態・法律・飼育について解説」へのイリエワニ写真提供など、爬虫類写真家としても活躍中。

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